再エネ用途で使用される蓄電池の分類

蓄電池とは、放電して電気を使ったとしても、使い切りではなく、充電を行うことで電気を蓄え、
くり返し使用することができる電池のことを言います(二次電池)。
スマートフォンやノートPCなどに内蔵されているバッテリーなども蓄電池(二次電池)の一種です。

二次電池の中でも、再生可能エネルギーの用途で使用されるものは一般的に大きく2つに分類され、
主に工場やビルなど大型の建物向けに、業務用や事業用として使用されるものは産業用蓄電池
戸建て住宅などの規模で使用されるものは住宅用蓄電池と呼ばれます

 

再エネ用途の蓄電池、産業用と住宅用ではどう違う?

再エネ用途で使用される産業用蓄電池と住宅用蓄電池の違いは、主に容量」「種類の2つにあります。
 

【違い①】蓄電池の容量

容量」については、
産業用蓄電池は住宅用に比べて非常に大きな容量を持っていることが殆どである一方、
住宅用蓄電池は10kWh未満の小容量となっています。

産業用蓄電池は、発電事業や設置する建屋の規模、用途などによって変化しますが、
容量は少ない場合で約10~20kWh、工場などでは500kWhを超える様な、
中~大容量の蓄電池が使用されます。

 

【違い➁】蓄電池の種類

再エネ用途で使用される蓄電池として主流なものは、
リチウムイオン電池鉛蓄電池NAS電池などがあり、
蓄電池の種類ごとに充放電特性(長周期向け・短周期向け等)やエネルギー密度等が異なります。
さらに、同じエネルギー容量を持つ蓄電池でも、種類が異なれば蓄電池1個あたりの重量/寸法、
設置に必要なスペース、価格等が変わります

 

産業用ではどんな蓄電池が使われる?

産業用蓄電池の種類には、リチウムイオン電池鉛蓄電池NAS電池などがあり、
これらは一般的に、業務用や事業用として使用されます。
蓄電池を数個~数百個ほど接続して、大容量かつ高電圧で運用される場合が多い他、
長期間に亘って使用される場合や、更には公共的に使用される場合もあるため、
安全性・信頼性・使用後のリサイクル性などが特に重要視されます。

そのような面においては、鉛蓄電池が持つ特徴が強みとなります。

他の種類の蓄電池と比較して特に安全性に優れており、
万が一の発煙・発火のリスクが極めて低いという特徴があるためです。
また、産業用では導入する蓄電池の個数が多くなるため、それに伴って導入時の費用も高額になりますが、
鉛蓄電池は他の種類の蓄電池よりも比較的コストパフォーマンスが高い傾向があるため、
導入時のハードルをやや下げることが可能になります。

加えて、蓄電池が寿命期を迎えた際、原材料の鉛に関しては約99%リサイクルが可能です。
資源の循環が確立されているため、環境負荷が低いと言えます。

なお設置スペースについては、鉛蓄電池は一つあたりの寸法/重量が大きいため、
十分に確保する必要があります。

 

住宅用ではどんな蓄電池が使われる?

一方、住宅用ではリチウムイオン電池が用いられることが主流となっています。

これは、リチウムイオン電池が持つ特徴として寸法/重量が非常にコンパクトであり、
個人住宅の敷地内に設置するのに適しているためです。
また、充放電特性として比較的 短周期の用途に長けているため、
家庭内で使用する電力(EV車への給電等を含む)に対し蓄電池から急速な充放電を行えることから、
住宅用への普及が進んでいます。

 

再エネ用途の産業用蓄電池を設置する時の注意点

蓄電池を設置する際には、蓄電池単体の他に、パワーコンディショナーなどの周辺機器や、
それらを収納する建屋も併せて準備することが必要です。
特に産業用では蓄電池の運用規模が大きくなる場合が多くあるため、設置条件や
関連法規についてよく確認しておく必要があります。

 

パワーコンディショナー、換気設備等の周辺設備にも注目!

産業用蓄電池の周辺設備の一つであるパワーコンディショナーが稼働する時には、
大きな熱が発生します。


よって、屋内に蓄電池とその周辺設備を設置する際には、パワーコンディショナーの排熱のための通気経路や、
排気ファンなどの排気設備を設置することが必要になる場合があります。

使用する蓄電池にリチウムイオン電池を用いる場合は、
建屋内の排熱性を強化するために空調機の設置が必要となる場合があります。
リチウムイオン電池は高温に弱い傾向があるため、過度な高温環境で使用し続けると、
発火・発煙に繋がる恐れがあります。

一方、鉛蓄電池を用いる場合、空調機は必須ではありませんが、
充電中に水素ガスが発生する場合があるため、
換気のための通気経路や換気扇などの換気設備の確保が必要です。
室内で、密閉状態の環境下では鉛蓄電池は使用できません。

 

収納建屋を設置する際、事前に法律の確認を!

蓄電池およびその周辺設備を屋外に設置する場合は、それらを雨水・煤塵・潮風などから
守るための建屋などが必要になります。
建屋を新たに設置すると、規模によっては建築物とみなされる場合もあるため、
自治体に確認申請(建築物)を提出する必要が出ることもあります(※市町村ごとの条例で異なります)。

しかし、屋外用キュービクル(電気設備を収める金属製の箱)を用いて蓄電池を設置する場合は、
建築確認に関する申請は不要の場合もあります。

設置する蓄電池の容量が一定規模(4,800Ahセル)以上では、火災予防条例による
蓄電池設備の設置届出が必要になります。

また、関連法令としては、上記の建築基準法火災予防条例以外に、電気事業法
消防法などがあります。
 

再エネ用途の産業用蓄電池、どのように選べばいい?

再エネ用途で産業用蓄電池の導入を検討する際は、下記の事項に沿って、
蓄電池を選定することをおすすめ致します。
それにより、リチウムイオン電池または鉛蓄電池、あるいはその他の蓄電池など、
最適な蓄電池の種類や設置規模を見つけるヒントが見つかります。
 

  1. 太陽光発電や風力発電等、再生可能エネルギーの発電規模はどれくらいか?
  2.  蓄電池をどのような用途に使用するか?(電力の自家消費用途、BCP用途など)
  3. 蓄電池に蓄電したい電力(容量)はどのくらいか?
  4. 蓄電池(パワーコンディショナーなどの周辺設備含む)を設置するスペースはどのくらい確保できるか?
  5. 設置場所は、屋外または屋内どちらであるか?
  6. 蓄電池の充電時間、また放電時間はどのくらい必要か?(長周期・短周期)
     

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再エネ用途にオススメな産業用蓄電池!「サイクルユース用鉛蓄電池」とはどんなもの?

再エネ用途で使用される蓄電池として、近年ではリチウムイオン電池の台頭が目ざましい傾向にあります。
その理由は特に「長寿命性」にあり、10年以上の期待寿命を持つと謳う蓄電池も、昨今では珍しくありません。

一方、鉛蓄電池も高性能化・長寿命化が進み、
特に寿命についてはリチウムイオン電池が持つ性能と肩を並べるものが開発されています。


古河電池がラインナップする「サイクルユース用鉛蓄電池」とは、
高頻度な充放電に特化して新たに設計・製品化された鉛蓄電池のことで、
太陽光発電などの再生可能エネルギー用途でも広く使用され始めています。

また、古河電池製の最新型のサイクルユース用鉛蓄電池は、期待寿命4,500サイクル
または6,000サイクル(=約15年程度)という特筆すべき長寿命性を発揮します。

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サイクルユース用鉛蓄電池、従来型の産業用鉛蓄電池とはどう違うの?

産業用鉛蓄電池は、一般的にはUPSなどの非常用設備に使用されていることが多いとされます。

UPSなどの非常用設備等で使用される蓄電池は、常に商用電源から満充電の状態にされており、
停電時などの非常時にのみ放電がされるという使い方が主流です。(※1)

しかしそのような用途で使用される蓄電池を、
太陽光発電等の再エネ用途(ほぼ毎日充放電を行う使い方)で使用した場合、
サイクル数(※2)600サイクル程度に留まり、想定の範囲内の短寿命という結果になります。​​​​​​

そこで「サイクルユース用鉛蓄電池」は、従来型の産業用鉛蓄電池に新たな設計を施すことで、
高頻度な充放電に対応し、かつ長寿命を実現しています。

また、長寿命性 以外にも、万が一の発煙・発火のリスクが極めて低いことや、
使用後にはほぼ99%リサイクルが可能といった特徴もあります。


このことからサイクルユース用鉛蓄電池は、特に長期間に亘って安全に運用することが
重要視される産業用の再エネ用途に最適な蓄電池となっています。


(※1)通常時は常に充電され、停電時などの非常時にのみ放電する鉛蓄電池を「スタンバイユース用鉛蓄電池」と呼ぶ。
      UPSなどの非常用電源装置に内蔵・使用されることが多い。

(※2)サイクル数とは蓄電池が充電と放電を繰り返すことができる回数のことで、蓄電池の期待寿命を表す指標となっている。

サイクルユース用鉛蓄電池FCPシリーズ

古河電池がラインナップするサイクルユース用鉛蓄電池FCPシリーズとは、
主に太陽光発電などの再生可能エネルギー用途に特化した新設計の鉛蓄電池です。
主な特徴として、下記があります。
 

  1. 安全性が高く、再生可能エネルギー用途の蓄電池として国内外で広く使用されてきた実績がある。
  2. 鉛蓄電池の原材料である鉛は、99%リサイクルが可能。
  3. 他種類の蓄電池と比較してコストパフォーマンスが高い。
  4. 特別な保護用回路、温度管理用の空調設備の設置が必須ではない。
     

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【導入例】佐賀県小城市庁舎オフグリッド電力供給システム

2022年に、佐賀県小城市庁舎に設置されたオフグリッド電力供給システムへ、
古河電池はサイクルユース用鉛蓄電池(型式:FCP-1000)を納入しました。 

「古河電池、佐賀県小城市庁舎のオフグリッド電力供給システムへ鉛蓄電池を納入」

本システムにより、通常の昼間晴天時に使用電力量を超えて発電された余剰電力は鉛蓄電池に貯蔵され、
夜間等で太陽光発電が使用電力量を下回る時は、鉛蓄電池から電力が供給されます。

また、大容量の鉛蓄電池であるため、天候不順の際や災害発生時の非常用として、
72時間の電力供給をおこなうことができます


特に、災害発生時には、防災活動拠点としての機能が維持されます。
また、太陽光により発電された電力を使用することでCO₂排出量を削減することができるため、
カーボンニュートラル達成への貢献が可能になります。

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再生可能エネルギーに使用する産業用蓄電池の期待寿命や劣化傾向とは?

蓄電池には寿命があります。
主に産業用の蓄電池として使用されるリチウムイオン電池と鉛蓄電池の場合、
充放電頻度や蓄電池温度、放電深度等によって期待寿命が大きく変わります。

蓄電池は、期待寿命とされる充放電サイクル数に達する頃には蓄電容量が低下し、
蓄電容量が70〜80%程度(またはそれ以下)まで劣化した状態を「寿命」と呼びます。
※リチウムイオン電池は、蓄電容量60%で寿命としている場合もあります。

また、蓄電池の種類によって劣化の傾向に違いがあります。
リチウムイオン電池は、使用開始初期からサイクル経過とともに、徐々に容量低下が始まり、
比較的、線形的に容量が低下していく傾向が見られます。

一方で
鉛蓄電池は、初期から寿命近くまで、サイクル経過しても定格容量を維持するような傾向があります。
 

蓄電池の期待寿命の考え方、「サイクル数」とは何か?

太陽光発電などに使用される蓄電池の寿命の考え方として、
代表的な例に、サイクル数というものがあります。
1回放電+1回充電=1サイクルとみなし、
蓄電池の充放電を何回繰り返すことが出来るか、という指標で寿命を計算します。


例えば期待寿命が4500サイクルの蓄電池を、1日の間で、太陽光発電による充電が昼に1回、
放電を夜に1回行う「ピークシフト用途」として使用するとします。

その場合、
1回放電+1回充電=1サイクル/日×300日/年=300サイクル/年
期待寿命が4500サイクル(25℃条件など)の蓄電池なので、
4500サイクル ÷ 300サイクル/年=15年

つまりこの蓄電池は、「1日に1回充放電させて使用し続けた場合、約15年の寿命が期待できる
ということになります。

※曇りや雨の日を考慮して、充放電を行うのは年間300日と仮定
 

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