ドローンには主にリチウムイオン電池(リポバッテリーもリチウムイオン電池の一種であること(第1回 リポバッテリーとドローンに適するバッテリー)を説明しました。)が使用されています。このため、リチウムイオン電池として共通する発火(熱暴走)のリスクがあり、さらにドローン特有のリスクとしてバッテリー切れ(電圧低下)による墜落があります。

 

本記事では、ドローンにおけるバッテリーのリスクマネジメントについて紹介します。

1.リチウムイオン電池の発火を防ぐリスクマネジメント

1.1 リチウムイオン電池が燃えやすい理由

リチウムイオン電池の燃えるポテンシャルは高いと言えます。


その理由を以下に述べます。


1)高出力な蓄電デバイス
リチウムイオン電池は出力が高く、短絡(ショート)すれば非常に大きな電流が流れ、急激に発熱し高温になります。

 

2)化学的な安定度が低い
150℃程度(紙の発火点=291℃より低い)で発熱反応が始まり、次々と連鎖反応が起こります。

 

3)電解液の主成分は燃えやすい有機溶媒
電解液に危険物第四類第2石油類に分類される引火性液体の有機溶媒を使っているため、着火すると激しく炎を吹き出します。

 

4)過充電への耐性が弱い
過充電になると正極が化学的に不安定になり、負極に金属リチウムが析出し、内部短絡の原因になります。(詳細は後で詳しく説明します)

1.2 リチウムイオン電池が発火に至るメカニズム(熱暴走)

図1はリチウムイオン電池が発火するプロセスを示したものです。

 

リチウムイオン電池は、推奨された使用温度範囲内で使用されても、過充電・短絡(特に内部短絡)・外部加熱などがトリガーとなり、バッテリーの温度が上昇します。

 

ある一定の温度を超えたところで次の反応が発生し、その反応に伴う発熱により更にバッテリーの温度が上昇し、よりシビアな反応が連鎖的に発生することで最後には発煙・発火となります。この過程を熱暴走と言います。

■熱暴走のトリガーである過充電について

リチウムイオン電池は過充電に弱いと説明しましたが、少し詳しく説明します。


図2はリチウムイオン電池の充放電の原理を示したものです。充電時には正極から負極、放電時には負極から正極にリチウムイオンが移動します。 
 

一定のリチウムイオンが負極に溜まるとそれ以上負極に溜める事が出来なくなり、満充電状態となります。更に充電を続けると「過充電」状態となり、図3のように負極に入れなくなったリチウムイオンは負極表面に金属リチウムを析出し、樹枝状結晶(デンドライト)を形成してセパレータを突き破り、正極と負極がと内部短絡します。(このとき、正極でも化学的に不安定になります)


こういった過充電の時以外にも、低温時の充電や過剰な急速充電などの際に金属リチウムを形成しやすくなります。
 

1.3 熱暴走を防ぐリスクマネジメント

熱暴走による発火を避けるためのいくつかのポイントを紹介します。

 

①過充電をしない
ご使用のバッテリーメーカーが推奨している充電器、もしくは専用の充電器を使用して、バッテリーメーカーが指定する充電方法に従って正しく充電を行うことで、過充電となることを防げます。

 

また、誤操作や充電器の故障でも過充電にならないように過充電保護機能を有するバッテリー(例 インテリジェントバッテリー)や充電器などがあり、それを採用することでも過充電を防ぐことができます

 

②短絡を防止する
ドローン用バッテリーは端子に常時電圧がかかっているものが多く、端子間を金属(針金など)で接触することで容易に短絡してしまいます。また、バッテリーのコネクタのゆるみ等でも短絡が起きやすくなります。

 

バッテリーを保管・運搬する際は、金属の突起物との同梱を避け、安全な箱や袋に入れることで短絡を防ぐことができます。

 

また、ヒューズを内蔵するバッテリーがあり、それを採用することでも短絡時の熱暴走を防ぐことができます

 

2.バッテリー切れ(電圧低下)による墜落を防ぐリスクマネジメント

ドローンの運用においてバッテリー切れを避けることは必須ですが、実際には「突然電圧が下がった」という事故が起きています。その原因はいくつかあり、以下のようにバッテリーを適切に管理することで防ぐことができます。

 

①充電量不足
過充電は危険ですが、充電電圧を低く間違えると充電量が不足して飛行の途中で電池切れになります。充電器の設定は絶対間違えてはいけません。(専用充電器なら設定を間違えることもなく安心です)


また、事前にバッテリーの電圧をチェックしたり、離陸前にバッテリー電圧や残量を確認することで充電量不足を回避することができます。

 


②バッテリー容量低下
長く使用しているとバッテリーの容量が減り、飛行できる時間が短くなります。使用回数や使用開始日をチェックするなどして「バッテリーの持ち」をしっかり把握しましょう。劣化の警告を出してくれる仕組みがあれば安心です。

 

③バッテリーパワー不足
電池は化学反応なので温度が低いとパワーが不足し、飛行中の電圧が低くなります。これは機体や大気の温度ではなく、バッテリー自体の温度が重要です。バッテリーや機体メーカーの推奨する温度範囲で飛ばしましょう。バッテリー自体の温度をモニタリングして監視すると安心です。

 

また、バッテリーが劣化してもパワーが出なくなります。容量低下と同様に劣化には注意が必要です。特に劣化した電池は低温でさらにパワーが出なくなります。


ドローンにおけるバッテリーの発火とバッテリー切れ(電圧低下)による墜落リスクのマネジメントについて紹介しました。ドローン用バッテリーを選ぶ時に、少しご参考になれば幸いです。

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ドローンバッテリーの解説

 

第1回 リポバッテリーとドローンに適するバッテリー

第2回 ドローンにおけるバッテリーのリスクマネジメント