第1回のコラムで鉛蓄電池の種類や点検方法、交換時期についてお伝えしました。
実は弊社の製品には鉛蓄電池だけではなく、アルカリ蓄電池(ニッケル-カドミウム蓄電池)という蓄電池もあります。
今回はこのアルカリ蓄電池に焦点を当てて種類、点検方法、交換時期についてご紹介します。
 

アルカリ蓄電池とは?

アルカリ蓄電池とは、屋外及び建物の中の受変電設備消防施設等の非常電源予備電源用として、
屋内・屋外キュービクル、電気室や蓄電池室等に設置されるアルカリ蓄電池を指します。

鉛蓄電池と比べると以下の様な特長があります。
・短時間で大きな電流を放電できる
・低温環境での使用に優れる
・自己放電が少ない
・寿命が長い
・過度な放電でも所定の回復充電を行う事で容量を回復する


また鉛蓄電池は角形電池ですが、アルカリ蓄電池は角形電池の他にも
皆さんが普段使う乾電池の様な形状の円筒状のものもあります。
 

アルカリ蓄電池の種類

アルカリ蓄電池は大きく分けて「ポケット式」「焼結式」「密閉式(弊社ではコラム電池と呼びます)」の3つの種類があります。
ポケット式、焼結式は角形電池で定期的に精製水の補充が必要です。
コラム電池は円筒状の電池で精製水の補充の必要はありません。

これらの違いは蓄電池の極板にあります。
いずれも電解液は主にアルカリ性水溶液である水酸化カリウムが主に使われています。
このことからアルカリ蓄電池と呼ばれています。
 

ポケット式アルカリ蓄電池

極板は多数の小さな穴をあけた薄い鋼板の縁を折り曲げてポケットを作り、その中に正極は水酸化ニッケルと
黒鉛、負極はカドミウムと鉄からなる活物質をそれぞれ充填して板状に配列したものです。
電解液は時間の経過とともに消費して減るので定期的に精製水を補充する必要があります。

(長所)
鉛蓄電池と比べると短時間で大電流放電に優れている。
極板の構造上、焼結式と比べると強度が優れている。


(短所)
鉛蓄電池と比べるとコストが高い。

(具体的な用途や設置場所)
受変電設備や非常照明、非常用発電機始動用、鉄道車両の始動用や非常用電源
 

焼結式アルカリ蓄電池

極板はニッケル粉末を焼結した多数の穴があいた薄い鋼板に正極は水酸化ニッケル、負極は水酸化カドミウムをそれぞれ活物質として充填させた物です。
電解液は時間の経過とともに消費して減るので定期的に精製水を補充する必要があります。

(長所)
ポケット式と比べると放電できる表面積が大きく、短時間での大電流放電に優れている。
ポケット式より、小型軽量になることが多い。


(短所)
鉛蓄電池、ポケット式と比べるとコストが高い。

(具体的な用途や設置場所)
受変電設備や非常照明、非常用発電機始動用、鉄道車両の始動用や非常用電源

 

密閉式アルカリ蓄電池

ポケット式・焼結式とは異なり、皆さんが普段から使用する乾電池の様な円筒状の電池です。
大きさや放電量もポケット式や焼結式より小さいですが、これらの蓄電池と同様に充電して使用できます。

(長所)
電解液を消費しない為、精製水を補充する必要がない。
コンパクトな形状を活かして自動火災報知機等、他のアルカリ蓄電池とは異なる設備へ使用されている。

(短所)
放電量が他のアルカリ蓄電池よりも小さい。

(具体的な用途や設置場所)
建物内の自動火災報知機、非常警報設備、非常放送設備、防火シャッター、誘導灯の予備電源

 

触媒栓

ポケット式と一部の焼結式アルカリ蓄電池にオプションとして付けることができます。

蓄電池から発生する水素ガスと酸素ガスを触媒により化学的に結合させ水に戻し、
電解液の減少を抑制して精製水の補充頻度を少なくする役割を持ちます。
また、急激なガス発生量の増加に対し、一部を外部に放出して熱を防ぐ役割もあります。

アルカリ蓄電池の触媒栓も定期的な交換が必要です。
目安は5年となっています。

アルカリ蓄電池の寿命

アルカリ蓄電池は構造的に鉛蓄電池よりも堅牢で長寿命ですが、
あくまで消耗品であり、定期的な点検や交換は欠かせません。
これを怠ると非常時に満足な動作ができない場合や、最悪の場合は火災の原因になることもあります。
各アルカリ蓄電池の期待寿命は以下のようになります。

また、保守点検の実施頻度は年1~2回を推奨しています。
 

アルカリ蓄電池の劣化要因

アルカリ蓄電池はどのような過程で劣化していくのでしょうか?
各種の劣化要因の一例をご紹介します。

(ポケット式)
長期間の使用で正極活物質の導電材が正極から発生する酸素により酸化し、
導電性が悪くなることで容量が低下。
ポケット式は蓄電池内のセパレータが無く、内部短絡が要因となることは少ないため、
外観の目視のみでは劣化進行の具合が分からない場合が多数。

(焼結式)
充放電を繰り返す中で負極活物質のカドミウムの結晶が粗大化し、
化学反応する為の表面積が減少して容量が低下。

(コラム電池)
電解液が少なくなり、化学反応ができなくなることで容量が低下。

 

アルカリ蓄電池の適正使用環境

アルカリ蓄電池は熱に敏感な蓄電池と言えます。

焼結ベント式を例にした場合、温度が高くなることによって負極板活物質のカドミウムが電解液中に
溶解し易くなり、それがセパレータ上で結晶化、まるで細い枝のように成長してセパレータを貫通し、
正極とつながります。
このことによって短絡を起こし、早期に寿命を迎えてしまいます。

上記を予防するために適切な蓄電池の使用環境温度は、25℃とされています。

 

蓄電池の交換時期が近い時に現れる兆候

①    電解液量の減りが異常に早い
②    アルカリ蓄電池本体にキズやヒビ割れ等がある
③    接続部に過度なサビ等の異常がみられる
④    電解液が過度に染み出している
⑤    汚れが浮いている
⑥    各電池の浮動充電電圧にばらつきがある


上記の兆候が見られる場合は、危険信号です。
お早めに点検業者・製造メーカーへお問い合わせください。

 

アルカリ蓄電池セルフチェックの方法

アルカリ蓄電池の交換時期は、蓄電池が収納されているキュービクルの扉内側や、
台車に貼り付けてある製造業者のラベルを確認することで暫定的な判断が可能です。
ラベルには、メーカー名・蓄電池名称・製造年月が記載されています。
触媒栓付きの場合は触媒栓の交換時期のラベルも貼り付けてあります。

 

 

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