はじめに
蓄電池の設置を検討しているが、どの蓄電池を使えばよいかがよくわからない
という人は少なくないと思います。
この記事では、
- 蓄電池とはそもそも何か
- 電流の流れる仕組み
- 蓄電池の種類
- 蓄電池を使うメリット、選び方
などについて解説します。
また、蓄電池を使う上での課題、設置のための
補助金についても紹介しています。是非参考にしてください。
蓄電池は、電気エネルギーを貯蔵し、必要なときに放出できるデバイスです。
一般的に、蓄電池は充電可能な電池とも呼ばれ、
乾電池などの一次電池とは区別されます。
以下では蓄電池とは何かについて、なるべく簡単に解説していきます!
蓄電池は、繰り返し使用が可能なエネルギー貯蔵設備です。
蓄電池は電気を貯めて、必要なときに放出することができます。
繰り返し使用可能な蓄電池は、携帯電子機器、電動自動車、
再生可能エネルギーシステムなど、さまざまな場面で広く使用されており、
エネルギーの効率的な貯蔵と再利用を可能にしています。
家庭用と産業用の蓄電池は、電力要求に合わせて異なる種類や容量が使用されます。
家庭用蓄電池の種類と容量:
家庭用蓄電池は一般的に住宅の電力需要のピークを削減し、
太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用するのに役立ちます。
一般的な容量は
数キロワット時(kWh)から20キロワット時(kWh)以下まで
提供されています。
産業用蓄電池の種類と容量:
産業用蓄電池は通常、電力の安定性を向上させたり、
再生可能エネルギーを貯めたり変動を調整したりするために使用されます。
一般的によく知られている蓄電池としては、
- 鉛蓄電池
- ニッケル水素電池
- リチウムイオン電池
- ナトリウム・硫黄電池
- レドックスフロー電池
の5種類がありますが、ここでは、民生機器や業務産業用などに用いている
鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池の特徴について
解説していきます。
鉛蓄電池は、その歴史は長く伝統的な蓄電池技術の一つで、
多くの利点と欠点があります。
利点及び欠点:
- 低コスト:
鉛蓄電池は比較的低コストで製造され、入手しやすいため、初期投資が抑えられます。 - 成熟した技術:
鉛蓄電池は長い歴史と安定した技術を持つ製品であり、信頼性が高く、
また、電解液に水系の希硫酸(不燃性)を用いており助燃性がなく安全性が高いです。 - 大容量:
鉛蓄電池は小容量から大容量の各容量ラインナップが存在し、
比較的大きな電力を貯蔵できるため、小さい電力需要に限らず需要が高い用途にも向いています。 - 瞬時のエネルギー供給:
鉛蓄電池は停電などに瞬時にバックアップが可能で、
非常用電源や緊急電源として使用されることが多いです。 - リサイクル可能性:
鉛蓄電池はリサイクルが容易で、鉛を再利用することができ、
資源の供給リスクや環境持続性の面で優れています。 - 質量と体積:
鉛蓄電池は他の蓄電池技術に比べてエネルギー密度が低く、製品が重く、
大きいため、スペースを取ることがあります。 - 有害物質:
鉛蓄電池はその極板に鉛酸を使用しており、有害な物質である鉛を含み、
また、希硫酸も使用しています。廃棄の際には廃棄物処理が必要です。
なお、国内ではリサイクルシステムが出来ており、
適切な廃棄物処理が行われるので、環境影響の問題はありません。 - 寿命:
従来の鉛蓄電池では、充放電サイクル数が限られており、寿命が比較的短いことが欠点でした。
しかしながら、最近の長寿命タイプの新型鉛蓄電池では、優れた充放電サイクル数を有しており、
他の蓄電池技術と遜色ない長寿命を実現できる製品も出てきています。 - 自己放電率の高さ:
鉛蓄電池は自然の放電が比較的速いため、長期間の保管には補充電が必要となります。
用途:
- 自動車の始動用電池
- 瞬時の電力供給が必要なバックアップ電源
- 太陽光発電システム
鉛蓄電池は長い間使用されてきた技術であり、
安全性や高信頼性の面から長らく特定の用途を中心に使用されていました。
最近、鉛蓄電池も進化しており、他の蓄電池技術と比べても、
容量ラインアップ、長寿命タイプ、および資源リスクや
リサイクルによる環境持続性に有効という点に注目されつつあります。
但し、設置スペースの制約などがあるため、
用途や適材適所の観点などを考慮する必要があります。
ニッケル水素電池は、比較的新しい蓄電池技術の一つで、
特定の用途に適している一方、欠点も存在します。
利点及び欠点:
- 環境にやさしい:
ニッケル水素電池は有害な物質を含まないため、廃棄物処理が比較的容易です。 - 高いエネルギー密度:
ニッケル水素電池はエネルギー密度が高く、比較的小さなサイズで大容量の電力を供給できます。 - 充電可能:
ニッケル水素電池は再充電可能な蓄電池であり、多くの充放電サイクルを持つため、長寿命です。 - 低い電圧:
ニッケル水素電池の電圧は比較的低いため、高電力要求の装置には不向きです。
このため、乾電池として使われることが多いです。 - 比較的高い自己放電率:
ニッケル水素電池は、自己放電率が比較的高いため、
長期間放置すると容量が減少する可能性があります。 - 質量:
ニッケル水素電池はリチウムイオン電池よりも重く、
携帯電子機器などの軽量化が求められる用途には向いていません。
用途:
- 携帯電子機器
- 一部のハイブリッド車両
- 照明
- 電動工具
ニッケル水素電池は、高エネルギー密度と長いサイクル寿命を提供するため、特定の用途に適していますが、
電圧が低いため、高電力要求の設備には不向きです。
乾電池の製品形状で使われることが多いです。
リチウムイオン電池の主な利点と欠点、および一般的な用途について説明します。
利点及び欠点:
- 高エネルギー密度:
非常に高いエネルギー密度を持ち、小型で軽量です。 - 高効率:
高い充放電効率を持ち、エネルギーの損失が少なく効率が良いです。 - 長いサイクル寿命:
適切な使用とメンテナンスが行われれば、多くの充放電サイクルを持ち、長寿命になります。 - 低自己放電率:
比較的自己放電率が低く、長期間の貯蔵に適しています。
但し、高い充電状態のまま保存すると劣化が進行しやすいため、
低い充電状態として保存することが多いです。 - 安全性の懸念:
リチウムイオン電池は過充電、過放電、物理的な損傷などに対して比較的敏感であり、
適切な管理が必要です。
また、過熱や過放電、過充電(特に低温下での充電)等を要因として発火・発煙を起こす場合があり、
火災や爆発のリスクが存在します。 - 定期的な交換:
リチウムイオン電池はサイクル寿命に制約があり、
経年の時間とともに性能(容量)が劣化します。
製品により、定期的な交換が必要になります。 - 資源の制約:
リチウムイオン電池の主要な成分であるリチウム等のレアメタルは
特定の供給源に依存しており、供給不足が将来的に問題になる可能性があります。 - リサイクル:
産業用製品を対象としたリサイクルシステムの検討が進んでいますが、
実用化段階にはまだ時間が掛かる見込みです。
用途:
- 携帯電子機器
- 電動自動車(EV)
- 再生可能エネルギーストレージ
- ポータブル電源
リチウムイオン電池はその小ささと高出力を生かした用途に使われます。
ただしリチウムイオン電池の利点と欠点を考慮しつつ、
適切な使用と管理が重要です。
放電の仕組みは通常の一次電池(乾電池等)と同じです。
ただし、蓄電池は充電が可能であり繰り返し使用できます。
以下ではその仕組みについて説明をしていきます。
電池の内部には、プラス極とマイナス極があります。
基本的には、一次電池も蓄電池も同じ構造です。
プラス極とマイナス極には性質の異なる物質が使われており、
電池の内部で、2つの極は電解質中に浸かっています。
電池から電気を取り出すのが放電です。
一般的な一次電池および二次電池内では、電気化学反応が起こっており、
それによって電子が放出されます。
電池内では正負の二つある電極の内、
負極では電子e-を含むイオンと結合することなどによる酸化反応によって電子が放出されます。
逆に正極では導線を通って流れた電子を吸収することによって還元反応が起こります。
それぞれの極で発生する酸化還元反応によって電気を発生させ続けることができ、
この時の電子の流れが放電となります。
電気を蓄電池に送り込んで再使用できるようにするのが充電です。
放電してしまった電池内では、電気化学反応が起りづらい状態で
電池内の物質が化学平衡状態を保っています。
しかし正極から電子を抽出し負極に電子を与えるような化学反応を起こすことにより、
おおよそ放電前の状態に戻すことができます。
二次電池内では放電時とは逆に外部電源から送り込まれた電子によって、
電池内で放電時とは逆の酸化還元反応を起こしているのです。
この時の電子の流れが充電となります。
そもそも、なぜ蓄電池は注目されているのでしょうか。
以下では、脱炭素・災害時の対策などで、蓄電池が注目されている背景について説明します。
災害の多い日本では、台風・ゲリラ豪雨・線状降水帯・地震などによる
停電リスクへの対策が高まっています。
また、停電時の電力確保は個人、家庭、業務・産業、公共機関、緊急サービスなど、
さまざまなシーンで非常に重要です。
蓄電池は、停電時の電力供給を確保し、生活や業務の中断を最小限に抑えるための
重要なリソースとして注目されています。
近年、再生可能エネルギーの急速な普及に伴い、
再生可能エネルギー用蓄電システムへの蓄電池の需要が増加しています。
この需要には、電力ネットワークの安定性向上、エネルギーコストの削減、
エネルギーの持続可能性、環境への貢献などが背景にあります。
蓄電池は再生可能エネルギーの普及、電動車の増加、
エネルギーグリッドの安定性、グリーンテクノロジーの発展など、
カーボンニュートラルの実現に向けて重要な役割を果たす要素となっています。
日本政府は2050年カーボンニュートラル実現に向けて、
経済産業省が策定した蓄電池産業戦略について発表するなど、
これらのトレンドを支援し、持続可能なエネルギー未来の実現に向けて取り組んでいます。
蓄電池の導入は、防災対策・経済対策において様々なメリットがあります。
これらのメリットについて解説していきます。
蓄電池(再充電可能な電池)の停電時の電力確保の必要性は、さまざまな理由から非常に重要です。
- 電力供給の確保:
停電により、家庭や企業活動の電力供給が途切れ、様々な不便やリスクが生じます。
蓄電池は停電時に電力供給を確保し、電力を提供できます。 - 通信設備の常時運用:
通信設備は常に運用が必要で、停電が発生すると通信の途絶が発生し、
非常事態の際に情報伝達が困難になります。
蓄電池は通信設備の連続運用を支え、緊急情報伝達を可能にします。 - 医療機器への電力供給:
一部の医療機器は電力に依存し、患者の生命に影響を及ぼす可能性があります。
停電時には、これらの機器への電力供給が継続される必要があります。 - 安全保障:
停電が発生すると、セキュリティシステムや監視カメラの運用が妨げられ、
危険にさらされる可能性があります。蓄電池は安全保障に貢献し、
重要な場所や設備の監視を確保します。 - 緊急事態の備え:
自然災害や非常事態の際、蓄電池は非常用電力供給を提供し、
緊急避難や救助活動を支援します。
再生可能エネルギー用蓄電システムへの蓄電池は、
持続可能なエネルギー供給と電力ネットワークの安定性向上に重要な役割を担っています。
- 変動する再生可能エネルギー供給への対応:
再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電など)は天候や日時に応じて電力供給が変動するため、
安定した電力供給を確保するために蓄電池が必要です。 - 太陽光発電と風力発電の自給自足(自家消費):
家庭や企業が自ら太陽光発電や風力発電を利用する電力の自給自足(自家消費)ができるように、
再生可能エネルギーの発電と蓄電システムが組み合わされます。 - 緊急時のバックアップ電力:
再生可能エネルギーの蓄電池システムは、災害や緊急事態の際に補助的に電力を提供します。
通信設備、病院、非常用照明などの重要な設備が連続して運用できるように補助します。 - 環境への貢献:
再生可能エネルギーと蓄電池の組み合わせは、化石燃料に頼らないクリーンエネルギー供給の促進に貢献し、
温室効果ガス排出量を削減します。
蓄電池の設置には、電気料金の削減を含む多くのメリットがあります。
- 自給自足:
太陽光発電などの再生可能エネルギーシステムと組み合わせて、
家庭やビジネスで自給自足の電力供給を実現できます。
これにより、電気料金の削減が可能となります。 - 時間帯別料金の最適化:
一部の地域では時間帯別の電力料金が導入されており、ピーク時の電力が高く設定されています。
蓄電池は、電力料金が低い時間帯に電力を蓄え、
高額な時間帯にその電力を使用することができます。 - 電力のピークシフト:
蓄電池を使用して、電力のピーク需要時に蓄えた電力を供給できます。
これにより、電力供給のピークがシフトし、電気料金の削減に貢献できます。
蓄電池を導入する際には、いくつかの課題や注意点を考慮する必要があります。
以下は、主要な課題と注意点を費用、スペース、および経年劣化の観点から説明します。
蓄電池を導入する際には様々なコストがかかります。
- 初期投資費用:
蓄電池の導入には、蓄電システム自体の購入費用がかかります。
蓄電池の容量や性能に応じて価格が異なります。 - パワーコンディショナー(インバーター)と関連機器:
蓄電システムには、パワーコンディショナー(インバーター)や関連機器などが必要です。
これらの構成部品もコストに影響します。 - 保守費用:
蓄電池の保守にも費用がかかります。
定期的な点検、蓄電池の寿命管理、修理などが含まれますが、
蓄電池によってこれらのコストは大きく異なりますので、確認が必要です。
蓄電池の導入で検討が必要なことは、スペースや設置環境の確保です。
- スペースの確保:
蓄電池は一定のスペースを必要とし、設置場所を確保する必要があります。 - 適切な環境:
蓄電池は適切な温度と通気性のある環境で運用される必要があり、これに注意する必要があります。
当たり前のような話ですが、蓄電池には寿命があり、劣化による性能低下についても確認が必要です。
- 蓄電池寿命:
蓄電池は経年の時間と共に劣化し、容量や性能が減少することがあります。
蓄電池の寿命管理が必要であり、定期的な交換が発生します。
これらは蓄電池の種類によって大きく異なります。 - 劣化の管理:
蓄電池の劣化を管理し、最適な性能を維持するために必要な対策や交換に関する計画が必要です。
このコストについても蓄電池の種類で大きく異なります。
蓄電池を選ぶ際には、導入の目的、容量、充放電時間などを考慮することが重要です。
導入する目的によって、必要となる蓄電池の種類や性能が異なります。
災害用に導入するのか、それとも電気料金の対策などの日常的に使用するのかなどで、
導入する蓄電池の種類も、その大きさも異なってきます。
蓄電池の容量は、家庭や業務・産業用の電力需要に合わせて選択する必要があります。
電力使用量やピーク時の需要をきちんと吟味しながら、
電池で賄いたい必要な電力量(kWh)を検討します。
また、電力量(kWh)だけでなく、一度に使える電気の出力量(電力(kW))
も確認しておくとよいでしょう。
蓄電池を効果的に充電するためには、
再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電など)からの充電時間の把握が重要です。
エネルギー供給の時間帯や季節によるばらつきなども考慮する必要があります。
また、必要な時間帯やピーク需要時に電力を供給するために、
蓄電池の放電可能時間を把握することも重要です。
蓄電池の設置費用の負担を少なくする対策として、補助金があります。
その種別などについての一例を紹介していきます。
日本では、蓄電池の設置を促進し、再生可能エネルギーの活用、
電力ネットワークの安定化、省エネルギーの推進などを支援するために
さまざまな補助金制度が存在しています。
ただし、これらの補助金制度の詳細や条件は地域や制度によって異なる点、
補助金の予算がなくなると交付終了となる点などに注意が必要です。
詳細や最新の情報は、関連機関や自治体のウェブサイトを確認することをおすすめします。
日本の蓄電池設備に関する補助金や助成金制度は、
年度や地域によって異なり、変更されることがありますが、
一般的に多くの補助金制度は、設備の購入前に応募し、承認を得てから、設備を購入することが必要です。
購入後に補助金を申請することができるかどうかは、制度や政府の方針によって異なります。
一部の制度では、購入後の蓄電池設備に対する補助金や助成金を提供している場合もありますが、
通常はあらかじめ設定された条件を満たす必要があります。
このような条件には、設備の性能、容量、用途、設置場所などが含まれます。
日本の蓄電池に関する補助金についての最新情報を入手するためには、
経済産業省や各自治体のエネルギー政策、再生可能エネルギー促進制度などの
公式ウェブサイトから最新の情報を確認することが重要です。
蓄電池の補助金を受ける条件は、地域によって異なる場合があります。
以下は一般的な条件の一例ですが、具体的な補助金の条件を確認するために、
関連する政府機関や地方自治体を確認することが重要です。
- 補助対象エリア:
一部の補助金制度は特定の地域に限定されることがあります。 - 技術仕様:
補助金を受けるためには、特定の技術仕様や性能要件を満たす必要があることがあります。 - 設置場所:
蓄電池をどこに設置するかに関する条件が設けられていることがあります。
たとえば、住宅用、商業用、工業用などの用途で補助金条件が異なることがあります。 - 安全規格:
補助金を受けるためには、特定の安全規格や認証を満たす必要がある場合があります。
これには電池の耐火性、短絡対策、取り扱いの安全性などが含まれます。 - 応募手続き:
補助金制度に応募するためには、必要な書類や手続きを完了する必要があります。
これには申請書の提出、設置予定の蓄電池の詳細な情報提供、予算の調査などが含まれます。
▼お問い合わせはこちら
fb-indst.sales@furukawabattery.co.jp
古河電池株式会社 産業機器営業統括部 営業技術部