現代の生活に欠かせない電池には、様々な種類やサイズがあります。選択肢が多すぎて何を選べばいいの?今回は電池の種類、性能指標及び最近急速的に普及してきたリチウムイオン電池の特徴を中心に紹介していきます。
電池には化学電池と物理電池があります。
化学電池は化学反応によって電気を作る電池で、さらに一次電池、二次電池、燃料電池の3種類に分類されます(図1)。
一次電池は、使い切りの電池(乾電池など)で、二次電池は充電すれば繰り返し使える電池(バッテリー、蓄電池、充電式電池)のことです。
スマートフォンやPCなどに使われるリチウムイオン電池は二次電池です。
ここではバッテリーの性能指標を紹介します。バッテリーの主な性能指標として電圧、容量、エネルギー密度、出力(密度)、放電レート、寿命などがあります。分かりやすくするために、水が貯まったタンク(図2)をイメージしましょう。
タンクの大きさが電池の容量、蛇口から流れる水の水圧が電池の電圧、水流が電池の電流、水の勢いが電池の出力に例えられます。
(1) 電圧(V)
電圧は電気を流す力で単位はボルト(V)です。電池は残量が減ると電圧が下がります。
(2) 容量(Ah)
容量は、電池から取り出せる電気量(Ah)ですが、取り出せるエネルギー量(Wh)で示されることもあります。次の式で計算されます。規格により一定の放電電流での値を表記していますが、放電電流が大きくなると容量が小さくなる傾向です。
電気量(Ah)=放電電流(A) × 放電時間(h)
エネルギー量(Wh)=電気量(Ah) × 放電電圧(V)
(3) 電池残量(SOC)(%)
SOCは「State Of Charge」の略で充電状態、充電率のことを指しています。満充電で100%になります。
(4) 出力(W)
出力は電池から瞬間的に取り出せるパワーです。次の式で計算されます。一定の出力時、電池残量が小さくなると電圧が下がり、電流は大きくなります。
出力(W)=放電電圧(V)×放電電流(A)
(5) エネルギー密度(Wh/kg、Wh/L)
エネルギー密度とは、単位質量または単位体積当たりで取り出せるエネルギー量を表す数値です。大きいほど電池の性能が高いと言え、電池の性能を評価する重要な指標です。
(6) Cレート(放電レート、充電レート)
「Cレート」とは、電池容量(C)に対する充放電電流値の比で、電流値の大きさを相対的に示すものです。例えば、1Cは容量を1時間で放電する電流値、3Cはその3倍の電流値になります。放電時のCレートが「放電レート」、充電時が「充電レート」です。
(7) サイクル寿命
蓄電池がある条件で何回充放電できるかを表すものです。
(8) 保存(カレンダー)寿命
蓄電池がある条件で放置されても使用できる期間を表す。
代表的なバッテリーとして、鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池(ニカド電池)、ニッケル水素電池及びリチウムイオン電池などがあります。
鉛蓄電池とニカド電池は技術が成熟しており、使用実績が豊富です。
鉛蓄電池は安価であることから自動車や産業用に広く使用されています。
ニカド電池は、過充電・過放電に強い頑丈なバッテリーで信頼性が高く、非常用電源や電動工具等に用いられています。
ニッケル水素電池は、ニカド電池の特徴と似ていますが、エネルギー密度はニカド電池より高いです。
また、鉛蓄電池やニカド電池には、環境負荷物質の鉛やカドミウムが含まれているため、日本では各電池メーカーや自動車メーカーを中心に使用済み電池の回収・リサイクルが行われています。
リチウムイオン電池はエネルギ―密度が高いことやサイクル寿命が長いことなどからスマートフォンやPCをはじめとした電子機器から、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー(再エネ)分野などまで広く使用されています。
■各種バッテリーの特徴・比較
下表には、各種バッテリーの特徴や比較についてまとめました。
リチウムイオン電池は実用されてから、急速に普及してきました。では、その理由はなんでしょうか?ここでリチウムイオン電池の特徴について詳しく紹介していきましょう。
(1) エネルギー密度と電圧が高い
リチウムイオン電池は他のバッテリーと比べ、エネルギー密度と電圧が高いです。エネルギー密度が高いと同じ電気量を貯める時は、より小さく、より軽くできます(エネルギー密度が鉛蓄電池の約3倍、重量では約1/3になるというイメージ)。
(2) サイクル寿命が長い
充放電を繰り返しても劣化しにくいという特長があり、サイクル寿命が比較的長いです。
(3) 性能の幅が広い
リチウムイオン電池は使用される材料により多くの種類があり、それぞれの特徴も異なります。図3には代表的なバッテリーの性能を示すラゴンプロットと言われるグラフにリチウムイオン電池を利用した製品の例を示しました。リチウムイオン電池として、性能の幅が非常に広いということを示されています。
(4) 放電レートによる容量差が少ない
鉛蓄電池などは放電レートによる容量差がありますが、リチウムイオン電池はそれが極めて少ないため、定格容量分をフルに活用することができます。
こちらの特徴によりリチウムイオン電池が実用化されてから一気に普及してきました。一方、リチウムイオン電池には懸念点があります。
■リチウムイオン電池の危険性
リチウムイオン電池の電解液に危険物第四類第2石油類に分類される引火性液体の有機溶媒を使っているため、発火・発煙などにつながる危険性があります。また、種類によって危険度は異なります。
■リチウムイオン電池のバッテリー・マネジメント・システム(BMS)
発火や発煙などの危険性があるリチウムイオン電池を安全かつ有効に使うためにすべてのセルが使用範囲となるようにセル及びモジュール(直列・並列接続したセル群)等を監視・制御を行う BMS / BMU(バッテリー・マネジメント・ユニット)を使用するのが一般的です。
まとめ
バッテリーの種類や性能指標、代表的なバッテリーの特徴について説明しました。ご参考になれば幸いです。
古河電池のリチウムイオン電池は、ドローン、ロボット、産業機器等、幅広い用途にご採用いただいております。
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